「“かるちゃん あそぼーって”近所の子が来てくれても、“いかなーい”って家でひとりママゴトしてたのよ」
と母が幼少のわたしのことを話してたから
生まれつき個人プレー向きの性格なんだと思う。
加えて空気を読むことが絶望的にヘタクソで、
どうすれば相手は喜ぶのかイヤな気持になるのかというのを察するのがものすごく苦手。
何を話せば相手を傷つけないのか考えすぎてしまう。
そんなものだから、学校や会社では、必要以上に人の顔色をうかがう毎日を送っていた。
友達に囲まれて、ワイワイするのはキライではないけど、
話題の中心に置かれると、もうどうしていいかわからなくてとても疲れるので、
とにかく地味に地味に目立たないように生きていた。
自分の身なりも無頓着で、無難なもの目立たないものを選んできていたのだけど、
大学生の時、ピアスを少しだけ買ったことがある。
鉱物(宝石)が好きで純粋に「身に付けたい」と思ったから。
イヤリングは落としてしまうのがイヤで、思い切ってピアス穴を開けたのだ。
今より、ピアスは少数派な時代だったから、
地味地味してたわたしがピアスなんか開けて、みんな驚いたと思う。
「どうしたの?」「ピアス空けたの?」「びっくり」
話題の中心になっていたたまれなくなってしまった。
そしてそれに疲れてしまって、ピアスはすぐにやめてしまった。
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わたしはかなり軽い気持ちでフリーランスになった。
出産のために会社を辞めて育児に専念していたのだけど、やや時間を持て余していて
「家で子どもを見ながら、何かできないかな」と考えたのが最初だった。
働きに行けない間のお小遣い稼ぎとして始めた仕事は、
いろいろあって、運よく軌道に乗って、おかげさまでフリーランス歴10年を超えた。
当時赤ちゃんだった子どもはもう高校生。
家ネコがふらっと外に出てみて、そのまま野良ネコになってしまったような形だ。
フリーランスになってみたら、この働き方が自分に合っていることに気が付いた。
周りに合わせた、おしゃれやウワサ話に気を使うこともない。
納期がある仕事もあるけれど、そこを守れば自分のペースで自分の時間で仕事を進められる。
仕事で知り合った人と話す内容は仕事の話が大半で、その仕事が終わると次の仕事で再会するまで疎遠でいられる。
(こういう付き合い方がさみしいと思う人もいるみたいだけれど、わたしには心地よい距離感。)
そして、同じフリーランスや起業家として生きている人たちの自由さに魅せられた。
仕事柄、会社の社長やクリエイターの人とお会いすることが多いのだけど
まわりに同調したりすることをせず、自分の意見や個性を貫き
堂々としている人たちの様子にあこがれて、わたしもああなりたいと思った。
彼らのように「自分」をだしてもいいんだ 大丈夫なんだ
とわかって、少しずつだけれど周りに振り回されない自分になることができていった。
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大学生の時にすぐやめてしまったピアスを、去年からまた付け始めた。
「40代でピアス穴開けるなんて」と思ったりもしたけど、開けたかったから開けた。
学生の頃よりはお金に余裕はあるので、ピアスはいろいろ買いそろえて、
毎朝、その時の気分で好きなものを身に付けている。楽しい。
この間、家の掃除をしていたら、大学生の頃に使っていたピアスが出てきた。
マザーオブパールの三日月ピアス。
それを今のわたしのアコヤパールと並べてみた。
「わたしはあの頃、こんなに小さくなって生きていたんだな」
パールがわたし自身のように見えた。
なんとなく始まったフリーランスの働き方。
好きな時間で
好きな仕事を
好きなピアスを身に付けて
これからもわたしは、自由に歩いていくのだ。